第01話「美代零」

 赤色灯が明滅し、官憲かんけんの者たちが銀行を取り囲んでいる。

 臆病な銀行強盗の青年フレアは、照明の落ちた行内こうないを見回っていた。自らの罪は決して許されない。しかし敬愛する兄と亡き家族のため、目的は果たさなければならない。

 犯罪現場という異常な状況の中、フレアは隠れていた少女、美代みしろれいを保護する。

 加害者と被害者の関係にも関わらず、ふとした会話からフレアと零の心は通じてゆく。心優しい青年と天真爛漫てんしんらんまんな少女、二人の数奇な交流からうまれた温かさが、凍てついた青年の魂を癒してゆく。

 果たして迎える朝に目にするのは、望みの成就か失望か、今はまだ誰も知らない。遠く離れた無慈悲な銃口が、静かに、その刻を待ち構えていた。